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10月12日
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山本貴志さんの後期ベートーヴェン

ピアノソナタのコンサートに行きました。

去年の大晦日の16人による全曲演奏会で

初期のソナタを魅力的に演奏していて

良い印象が記憶にあり、期待していました。

結論からいえば、一番良かったのは、

アンコールのショパン夜想曲第2番。

彼の演奏の特徴のピアニシモ部の

デリケートな表情は良かったです。

 

しかし総じて、中期以降のベートーヴェン

特有の音が厚みを増していくパートや

重い音の表現が良くありませんでした。

3曲の中では31番が比較的良かったの

ですが、第3楽章の2番目のフーガの

最後を超高速で十把一絡げとばかりに

まとめたのには、がっかりしました。

もうひとつ、彼の演奏中の耳の位置が

気になりました。

sketch667

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演奏を聴いていて、特に前半、低音部の音像がぼんやり聴こえ、最もオクターブの高い音だけが少しきつく聴こえ、

全体の音のバランスが悪いと感じました。(トリルの力加減にも問題があったように感じました)

浜離宮ホールのピアノを使っていましたが、ホールごとにピアノを換えるなら、各ホールのピアノの特性や残響に応じて微妙にタッチを変える必要が

あるように思いますが、あの鍵盤にかぶさるような姿勢(耳の位置)では、ピアノの弦の響きの状態を聴きわけながらタッチを調整しつつ

演奏することはできないのではないか、と感じました。 音数の少ないショパンのノクターンでは、特に音の響き具合を気にすることなく、

ピアニシモの微妙なタッチだけに集中しているいことで見事な演奏を聴かせてくれますが、もしあの姿勢そのものを“自分の持ち味”と

勘違いしてしまうと、(せっかく独特の才能があるのに)今後の展開を狭めてしまう原因になるのではないか、とちょっと心配になりました。

後期ベートーヴェンは、あと15年くらい後に(彼はまだまだ若いですし)どう変わるか聴いてみたい気がします。