演奏を聴いていて、特に前半、低音部の音像がぼんやり聴こえ、最もオクターブの高い音だけが少しきつく聴こえ、
全体の音のバランスが悪いと感じました。(トリルの力加減にも問題があったように感じました)
浜離宮ホールのピアノを使っていましたが、ホールごとにピアノを換えるなら、各ホールのピアノの特性や残響に応じて微妙にタッチを変える必要が
あるように思いますが、あの鍵盤にかぶさるような姿勢(耳の位置)では、ピアノの弦の響きの状態を聴きわけながらタッチを調整しつつ
演奏することはできないのではないか、と感じました。 音数の少ないショパンのノクターンでは、特に音の響き具合を気にすることなく、
ピアニシモの微妙なタッチだけに集中しているいことで見事な演奏を聴かせてくれますが、もしあの姿勢そのものを“自分の持ち味”と
勘違いしてしまうと、(せっかく独特の才能があるのに)今後の展開を狭めてしまう原因になるのではないか、とちょっと心配になりました。
後期ベートーヴェンは、あと15年くらい後に(彼はまだまだ若いですし)どう変わるか聴いてみたい気がします。